VR画像(パノラマ写真)の作り方:AutopanoGigaによるスティッチ


VR画像(パノラマ写真)の作り方:一眼レフカメラでの撮影とノーダルポイント」、「VR画像(パノラマ写真)の作り方:HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)合成」という記事で、一眼レフカメラによる360度VR画像の撮影について書きました。この記事では「Autopano Giga」というソフトウェアによるスティッチ(合成)の作業について書いています。

Autopano Giga とは

Autopano Gigaは、米Kolor社が開発するスティッチソフトです。Kolorはもともとフランスの会社で、360度VR画像・映像に関するソフトウェアを開発していましたが、2015年に米GoPro社に買収されました。

Kolor社の画像合成ソフトAUTOPANO GIGA

Kolor社はもともと360度VR画像だけでなく、当初「モーションVR」と呼ばれた360度全天周のVR映像を前提とした製品開発を行なっていました。2014年頃から始まるVR動画の黎明期にはビデオスティッチの標準ソフトとして認識されました。もちろん、静止画VR画像(パノラマ写真)のスティッチに関しても優れたソフトです。

素材写真を読み込む

Autopano Gigaを起動したときの画面。

上記が、Autopano Giga起動時の画面です。独特なインターフェースですね。「VR画像(パノラマ写真)の作り方:HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)合成」で準備した3枚6組計18枚の素材写真を読み込みます。画面上のメインメニュー「ファイル」から、「イメージを選択する」をクリックし、写真を選択します。

3枚6組計18枚の写真が読み込まれた。

画面に18枚の写真が読み込まれました。ブラケット撮影した写真を読み込むと、 通常はAutopano Gigaが自動的にそれを検出して写真をグループ化してくれます。ただ、Exifデータがなかったり、カメラの機種によっては検出されないケースもあります。今回は検出がされなかったので、ブラケットのグループを設定する必要があります。

ブラケット撮影の1組となる写真、今回の場合は-3EV、±0、+3EVで撮影した3枚の写真を、シフトキーで複数選択したあと、右クリックを押します。表示されるメニューの「Nによるスタックを作成する」を選んで、3枚を1組にします。

ブラケット撮影のグループを設定。

3枚ずつ6組のグループを設定終えると、上記のように写真のアイコンの右下に「3」という数字が表示されます。これで合成の準備は完了です。

ウィンドウ左上の緑色の「検出」ボタンを押すと合成処理がスタートします。合成が完了すると、右側に合成結果(スティッチの設定ファイルとなる.pano)が表示され、スティッチ作業を行う新しいウィンドウが立ち上がります。

スティッチをして微調整

スティッチの編集画面

スティッチが上手くいったら、あとは微調整です。まず360度VR画像(パノラマ写真)の中心位置を合わせます。画面上のツールバーにある十字架のようなマークを選択し、画像をドラッグして調整します。その左側にあるいくつかのツール(自動水平・垂直ツール)を使って自動的に調整することもできます。

明るさとカラー調整

ツールバーの「カラーアンカーの編集(虹色のボタン)」を使って、明るさを調整します。「AUTO」を選択してExposure(露出値)を好みの明るさに調整します。これで最低限の調整は完了です。ツールバー右の方の「レンダー」(歯車のボタン)を押して、レンダー画面を表示させます。

パノラマ写真の出力設定画面

出力する360度VR画像(パノラマ写真)のサイズやファイル形式、出力先などを設定して、「レンダー」を押します。「ブレンディングの事前準備」の項目は、「アンチゴースト」または「露出融合」を選択しておきます。

合成出力のバッチレンダー画面。

「レンダー」を押すとすぐに合成出力処理が始まりますが、もし大量のパノラマ写真を出力する場合などバッチで処理を行いたい場合は、この画面でいったん処理を停止します。他のスティッチ作業の出力処理もキューに入れておいて、後からまとめて出力することができます。

スティッチがうまくいかなかった場合:コントロールポイントの確認と追加・修正

最初からスティッチが上手くいかない場合や、境界線の重複やにじみがひどい場合には、やはり手動による細かいスティッチ作業が必要になります。作業に入る前に、念のためレンズの設定値がおかしくないか確認します。

レンズの設定値などが間違っていないかを確認。

パノラマ編集画面の下部、左の三角形をクリックすると各写真のEXIF情報や合成パラメータを確認することができます。カメラやレンズによっては、この中の「画角」や「焦点」の項目が明らかにおかしな値になっていることがあります。もしそうであれば、正しい数値に修正するだけで解決する場合もあります。

「画角」や「焦点距離」に大きな間違いがない場合には、画面上の「Ctrlキーポイントエディタ」を押して、「CP(コントロールポイント)エディタ」ウィンドウを開き、コントロールポイントの手動設定を行います。

コントロールポイントの編集画面。

基本的な考え方は、「VR画像(パノラマ写真)の作り方:PTGuiによるスティッチ」と変わりません。画面左の画像の一覧から隣り合う2枚の写真を複数選択します。ブラケット撮影をしているので、同じ露出で隣り合う写真を選び、それぞれ同じ箇所を同じ番号で結びつけていきます。「自動制御点を加える」ツールを使うと、ドラッグで選択範囲を指定することができます。左右に並んだ写真のだいたい同じ範囲を指定すれば、その中でコントロールポイントを自動的に検出してくれます。全ての隣り合う写真同士でコントロールポイントを確認・設定していきます。魚眼レンズで6角度を撮った今回の写真素材の場合には、ひとつ開けて隣の隣の写真とも重なり合う部分があります。隣同士だけでなく、そのまた隣の写真ともコントロールポイントを設定していくと、合成の品質をより改善することができます。

コントロールポイントを設定したら、「CP(コントロールポイント)エディタ」ウィンドウ上部の「最適化」ツールで360度パノラマ画像全体の最適化を行います。この際、パノラマエディタ画面の左側にある「RMS」という数値が変化します。「RMS」は、設定されている全てのコントロールポイントの間における「矛盾」の大きさを数値化したもので、値が低いほど「矛盾が少ない」ことになります。合成の精度を表す指標として使われており、「3.0」程度であれば高い精度で合成ができていると言えます。どこまで容認できるかはスティッチャーの考え方と画像の用途次第ではありますが、「5.0」程度までは一般的に問題ないレベルの合成精度だと思います。この「RMS」値を確認しながら、コントロールポイントを修正・追加していく作業を繰り返します。

なんどやっても満足のいく品質の合成ができず、コントロールポイントとひたすら向き合っているうちにいつの間にか同じ工程を繰り返していることがあります。それは、「ある2枚が一見綺麗に繋がっても、その結果が別の2枚の間では矛盾を産む値になってしまう」というケースです。こっちで合わせるとあっちがズレる、あっちを合わせるとこっちがズレる。いつまでたっても合成作業が終わらなくなってしまいます。そもそも実写360度VR画像・映像の合成は、兎にも角にも「撮影がちゃんとできている」ことが肝です。そうでない場合には、必ずどこかに「矛盾・不整合」が起きてしまいます。そのことに気がついたら、あるいはそうした前提でスティッチの作業をする場合には、「この部分だけは綺麗に合成したい」という箇所と、逆に「綺麗に合成できなくても良い」箇所を決めることが重要です。合成作業のゴールが明確になって、マスクやレタッチも効果的にすることができます。

Autopano Gigaは、360度VR動画の合成・編集ソフトである「Autopano video」と一緒に動作する合成ソフトウェアでもあります。360度VR動画の制作における使い方については、また次の機会に書きたいと思います。