VR・AR・MRについて考える


一昨年の2016年は「VR元年」と呼ばれ、「VR」や「AR」という単語を目にする機会が急激に多くなりました。それまでは「VR」や「AR」というと、一部の専門家や興味を持つ人にしか伝わらなかったものが、今ではすっかり「一般用語」になりました。

私自身、「VR」や「AR」に関わるようになって早や10年。最近では「MR」や「SR」という言葉も出てきて、現場の人間も「ちょ、ちょっと待って」という具合になってしまうほど盛り上がっていますが、それぞれの言葉が何を(あるいはどの範囲を)指すのか、自分なりに随時整理しておきたいと考えました。正式な「定義」のような解説は、様々な書籍で試みられていますし、私も諸々参考にさせて頂いていますが、この記事に書くのはあくまで私個人の捉え方です。

VR(Virtual Reality)とは?

Virtual Realityという言葉の意味は、現実には存在しない世界やモノを、まるで現実のように表現したり体験することだと思っています。原始的に言えば、「現実そっくりの夢」も、VRのひとつ。表現という意味では、アニメーションやCGで作られたファンタジー世界、ゲームの世界なんかも広い意味でのVRだと思います。私にとってVRという言葉は、CGやゲームに結びついた言葉でした。

今風のVRは、「仮想現実」を「表現する」というよりも、「体験する」という部分に重みがあります。この変化は、間違いなくHMD(HEAD MOUNT DISPLAY)の登場によるものです。Oculus Riftを皮切りに、高性能型・廉価版モデルなど様々な製品が世の中に出たことから、VRは一気に発展しました。また、HMDの登場と同時期に全天周の360度VR動画が普及したため、「VR」という言葉は「HMD」で「全天周360度」を楽しめるコンテンツであるという認識が広がりました。

一方、VRの活用はエンタテイメント以外の分野でも一気に広まってきています。医療や教育の分野では、例えば医師のトレーニングで手術のシミュレーションを行ったり、人体模型の学習に使ったり。産業の分野では複雑な工業部品の構造を理解するために使ったり。VRは今後も様々な分野で発展していくと思います。最近ではIDCの以下のレポートがありました。2022年には市場規模が2,087億ドルに達する見通しとは、楽しみです。

IDC JAPAN 2022年までの世界AR/VR関連市場予測を発表

VR(Virtual Reality)は、「現実には存在しない世界やモノを、表現したり体験すること」です。その作り方や体験の仕方は様々あるものの、「HMDを使って360度全天周を楽しめる」ものがVRコンテンツの代表だと考えておけば、そう遠くはないでしょうか。

AR(Argumented Reality)とは?

AR(Argumented Reality)は、いま目の前にある現実の世界に対して、何らかの情報(映像・画像・文字など)をまるで現実のように重ね合わせることで、人の行動や理解を助けたり、付加価値を提供する技術です。実際にはないものを「現実世界に足す」という側面から、拡張(Argumented)現実(Reality)と呼ばれます。

スマホをかざすと街の情報が重畳するというARのサンプルイメージ

上記の画像のようにスマホをかざすと、スマホのカメラに映った目の前の現実世界に様々な情報が重畳する、というのが最も認知されているARですね。

日本で「AR」という言葉が広まったキッカケは、当時の頓智ドット社が2009年に開始したARサービス「セカイカメラ」です。初代iPhoneが発売されたのが2008年だったから、スマホの黎明期です。ユーザはスマホのカメラを通して、世界中のあらゆる空間に「エアタグ」という情報を残し、他のユーザと共有することができました。

もう一つは「ポケモンGO」。社会現象になったサービスで、「スマホAR」の認知度を一気に高めました。ARと言えば「ポケモンGO」というくらい代表的なARゲームになりました。様々なコラボレーションを重ねながら現在もサービスを継続しています。

スマートグラスの登場も、ARの認知を広げました。GOOGLE GLASSに代表されるスマートグラスは、メガネのレンズに情報をディスプレイするデバイスです。ただ、多くのスマートグラスは、「情報が表示されるだけであって、現実を拡張しているとは言えない」ことから、今では「ARグラス」という言葉が使われるようになりました。ARグラスでは、メガネを通して見た現実の世界における物体の形や形状に合わせて、本物のように見える物体を表示していきます。ARグラスによって、まさに現実が拡張されているのです。AR(Argumented Reality)とは、現実の世界に対して、仮想現実による追加情報を加える技術です。追加される情報は、まるで現実の世界に本当に存在するかのように付加されることが重要です。

MR(Mixed Reality)とは?

マイクロソフトのHololens。発表された当初わたしは、今で言う「ARグラス」のひとつとして捉えました。しかしHololensはCPU・GPUを搭載しWindows10が稼働するコンピュータで、一般的なARデバイスとは成り立ちそのものが違います。そしてMR(Mixed Reality)という言葉が聞かれるようになります。

Microsoft Hololensサイトより

Hololensは、通常モニタとキーボード、マウス等を使って行う操作をAR上で行い、そのアウトプットもARで出力する画期的なデバイスです。入力は、「視線トラッキング」「ジェスチャ操作」「音声入力」が可能で、コンテンツはWindows上で動作するアプリケーションとして開発します。レンズを通して仮想現実を表示するだけでなく、レンズから情報をインプットして処理を行います。その処理の結果はまた、まるで現実のように現実世界を拡張する形で反映されます。

映像や情報が、現実世界にまるで本物のように出現し、本物と同じように触ったり動かすことができる。仮想現実によって表示された物体が、現実世界にも影響を与える。そうした双方向のINPUT・OUTPUTが実現する世界こそ、MR(Mixed Reality)という言葉の意味だと思います。よく例えられるのが、スターウォーズのホログラム通信のような世界。まさにMRですね。

MR(Mixed Reality)とは、現実世界と仮想現実が融合した技術であり、その総称です。そういった意味では、VRやARも、広義の概念的にMRの一部ということができるかもしれません。

VRとARを統合したシステム zSpace

上記は、偏光レンズを使うことで、ディスプレイ内の3Dモデルが立体的に飛び出して見える特殊なディスプレイ、zSpaceです。ペン型のポインターから出るレーザーで、表示されている物体を自由自在に操作することができます。上の画像はちょっと大げさに見えるかもしれませんが、本当にこんな風に見えます。

zSpaceは、「VRとARを統合したオールインワンシステム」として事業展開しています。机の上でじっくりと作業や学習をするという場合には、zSpaceのような大きな画面と操作しやすい入力装置が役に立ちます。場所を選ばず、現場に立って操作を行う場合には、Hololensのようなデバイスは便利です。または今後、人間がデバイスを身につけずに稼働する仮想現実の仕組みが登場するかもしれません。

ソフトもハードも進歩して、VR・ARにもどんどん新しいアイデアが吹き込まれていくと思います。その度に新しい概念が登場し、新しい言葉が生まれます。そして都度、言葉の意味や認識を、整理し続けて行かなければならないのだと思います。